チェコ共和国・プラハ 2003/11/22-2003/11/24


プラハへ向かう機内では,暖かいサンドウィッチが出てきた.ロンドンから飛行機で2時間,かつてのチェコスロバキアは,現在,チェコとスロバキアに別れている.チェコの空の薄い雲を抜けて,下に下りると,どんよりとした天気のもと,プラハの空港ターミナルは,わりと新しくてきれいだった.空港の入国審査の人は,軽くこちらを一瞥して,無言でスタンプを押した.まだEU加盟前だったので,いわゆるEUの空港で押される飛行機のマークのスタンプとは違うやつだ.

空港からバスでホテルに向かうことにし,インフォメーションでカウンターを尋ねると,「左2つ目」とぶっきらぼうに言われた.空港周辺は何もなく,30分かけて街まで行くと,最後の最後で街になる.落書きだらけの汚いエリアを抜けていく.ホテルは,Andel's Hotel Prague という,モダンな良いホテルだ.

このどんよりとした薄暗い雰囲気に,意外とモダンな店や建物が少しミスマッチだ.磨り減った石畳と,どこまでも続いている細く曲がりくねった路地がこの街を強く印象付ける.

ホテルに入ろうとしたところで,「那古屋」という日本食レストランを見つけ,なぜかそこで昼食.なぜかこの地でカツどんときしめんを食べる.

街をぶらぶらする.地下鉄のエスカレータのスピードが異常に速く,結構危ない.地下鉄のきれいさは普通だが,ワキガ臭い.列車内の案内はチェコ語で書かれているので,全く読めない.

まずムハ Mucha 美術館へ.アール・ヌーボーの祖と呼ばれている人だ.今で言えば,漫画のような絵を描く.プラハ城の中の教会のステンドグラスもデザインしたらしいので,後で行ってみることにする.旧市街は,石畳の上を路面電車(トラム)が走り,車どおりもそこそこで,なかなか味のある良い雰囲気だ.少しうすら暗く,ブリュッセルや,パリの街のようにケバケバしくなく,少し控えめなところが気に入った.しかし逆に,店の人や係員は旧共産圏らしく全く持って愛想がない.この超観光地でこれなのだから,普通のエリアはもっとひどいのだろうか?火薬塔から始まる通りは,王の道(King's Road)と呼ばれ,それをカレル橋に向かって歩いていく.車が通らないので,人でいっぱいのこの通りの左右には店が並ぶ.マリオネット専門店や,なぜかマトリョーシカ専門店が目に付く.

ぶらぶら歩いていくと,屋台の前に行列ができているので,思わず並ぶ.並んでから,屋台の正体を確認すると,ウエハースだ.10Kc(=50円)で焼きたてのウエハースをかじると,何気においしかった.まんまるの大きいウエハースをかじりながら市庁舎の仕掛け時計を眺め,そのまま歩いていくと,カレル橋だ.


カレル橋の上では,ジャズを演奏したり,似顔絵を描いたり.石でできたこの橋には,欄干の一つ一つに彫像がすえられている.川の向こうには,ライトアップされたプラハ城が見える.だんだん暗くなる風景を眺めていたら,プラハがだんだんと良い街に思えてきた.

マリオネットの劇を,400Kc(=2000円)で17:00からみる.こじんまりとした劇場で,一時間ほどのドン・ジョバンニ.途中記憶を失う.


川沿いに歩き,プラハで一番有名なビアホール,ウ・フレクーへ.街灯のない暗い路地の中にある、この小さいビアホールは,すでににぎわっている.座ると頼まなくても黒ビールが出てくる.このビアホールでは,ジョッキが空になると,頼まなくてもどんどんビールが出てくる.わんこビールだ.この際限のない繰り返しに,みんな次第に酔っ払い,大いに話をする.流しのアコーデオンとホルンを持った2人組がやってくると,赤い顔の客たちはホルンの中にチップを投げ込んでいた.


次の日,のんびり準備をし,朝食を食べる.割とおいしいが,コーヒーがまずい.そのまま街に出る.国立博物館に行ってみる.Kc180(=900円).展示はたいしたことがなく,516.5 カラットのダイヤがあるぐらいだ.このダイヤ,なんでもないショーケースにごろんと置いてあるだけだ.

プラハ城に向けて,城壁に沿って坂を登っていく.だんだんとプラハの町並みが眼下に広がっていく.城の門までたどり着くと,プラハの町の赤い屋根の家々が広がっていた.城壁の中に入ると,中にはまた小さい街があった. かつて錬金術師が活動していたここは,今では小さな店の並ぶ小道になっている.そのひとつに,カフカの家がある.この小さな家ではカフカの本が売られている.


小道を抜けて奥へ入っていくと,聖ヴィート大聖堂へ.ここはステンドグラスに囲まれたゴシック形式の聖堂.しかし,この教会のゴシック建築は,なかなかすばらしい.真ん中にはめられた円形のデザインがとても印象的だ.この中には,ムハのデザインしたステンドグラスもある.


このムハのステンドグラスのもとのデザイン画は,ムハ美術館に展示されているのだが,実際のステンドグラスを見ると,もともとのデザインとかなり違う.確かに,彼の元デザインは,他のステンドグラスと異なるものかもしれないが,彼のデザインをこのように変えてしまうのはとても気に入らない.


プラハ城の奥へと歩いていくと,また丘があり,そこには,ストラホフ修道院がある.この修道院には,「哲学の間」「神学の間」と呼ばれる2つの部屋があり,それぞれフレスコ画でびっしり装飾されている.修道院はたいして見るところがないのだが,この2つの部屋はすごい.先日何気なく DVD を見ていたら,「リーグ・オブ・レジェンド」という映画にこの部屋が使われていた.


また石畳の道を,カレル橋に向けて歩いていく.だんだんと薄暗くなる中,店を覗きつつ,歩く.またカレル橋に差し掛かるころ,夕暮れになっていた.橋の下のこのモルダウ川の流れが,この街が,スメタナの「モルダウ」を生んだ.(注:この曲は,「わが祖国」というのが実際のタイトル.モルダウ川というのはドイツ語名で,チェコ語では,ヴルタヴァ川と呼ばれる.)

市民会館の近くで,Partiot-X という名前のレストランに入る.思ったよりもモダンな料理が出てきて,それなりにおいしかったが,コーヒーはやはりまずかった.

市民会館でコンサートを聴く.6人の小さなコンサートだが,チェコ交響楽団のメンバーが行っている.バッハ,モーツアルト,ドボルザークなど有名どころばかりの観光客向けのコンサートだが,先のスメタナの「わが祖国」も入っている.やはり,この国にして,この曲.という感じに,この国を訪れると,この曲を生んだ背景がわかる気がする.

ホテルに帰る途中,カレフールで 12Kc (60円)のピルスナービールを買う.このチェコのピルスナーは世界的に有名で,少し濃い味でおいしい.ついでにいうと,このチェコでもバドワイザーが売っているが,このバドワイザーはアメリカのバドワイザーとは別物.商標権をめぐってアメリカと争った歴史を持っている.


翌朝またおいしい朝食を食べ,まずいコーヒーを飲む.地下鉄でユダヤ人街へとむかう.このあたりは,かつてゲットーがあったり暗い歴史を持っている地区だ.屋根がギザギザになった Old-New シナゴーグという「古いほうの新シナゴーグ」というややこしい名前のシナゴーグの中に入る.200Kc(=1000円).このあたり,いたるところにダビデの星が描かれ,少し他のプラハの街と雰囲気が異なる.シナゴーグに入るとき,ユダヤ教の帽子を渡される.それをかぶり,中に入る.祭壇らしきものを囲んで長イスが置かれている.内装はかなり年季が入っていた.天井は放物線を描いたハリが斜めに交わり複雑な形をしている.中はそれほど広くない.

このあたりはエルメスや,ルイ・ヴィトンなど,高級点が並んでいる街でもある.店を覗きながら,カレル橋に向かって歩いていく.橋の袂に下りると,カレル橋を横から眺められる,気持ちの良いところに出た.川に沿って木が並び,ベンチがあって川が流れているのをのんびり眺められる.


またプラハ城へ向かって石畳の坂を登っていく.このあたりの風景が,プラハで一番良いように思える.周りのみやげ物屋もいくぶん控えめで,寒いせいか扉も閉まっており,押し付けがましく呼び込みをするものもいない.途中の店で,鱒のフライと,薄くたたいたポークカツレツを食べる.普通の人が普通に食べる料理だが,日本人の口に合うと思う.チェコのピルスナーを飲み,カツレツを食べ,一人 250Kc (1,250円)ぐらいだ.

今回は,2泊3日でのプラハの滞在だった.やったことといえば,王の道を行ったりきたりしたぐらいだが,この少し控えめな石畳の街は,とても良いところだった.

Last updated: Sat, 06/05/2004 17:01 GMT