Saqqara

階段ピラミッド

メンフィスとその墓地遺跡-ギーザからダハシュールまでのピラミッド地帯,79/10/26,文化遺産

カイロ前編より

今日は一日ピラミッドめぐりだ.

朝イタリアンで朝食をとる.イスラム教の国なので,ベーコンは豚肉でなく,牛肉だ.ハムもターキーか牛肉.昼食用にサンドイッチを作って失敬する.

タクシーをチャーター.8:00ぴったりに出発.このタクシードライバーは,エジプト人には珍しく無口なタイプで,こちらから話しかけないと話をしない.ハイウェイは使わずに,下道をずっと使う.途中はナイル川から引いた灌漑用水路がずっと続く.

ヤギを連れて歩いたり,ラクダに干草を乗せたり,農業をし,川の水で洗濯をしたりする,ナイルの脇で暮らす人たちの日常生活を眺めながらはじめのピラミッドに向かう.


ラクダが干草を運ぶ

Camel, Saqqara, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

サッカラの階段ピラミッドだ.ジェゼル王のためにイムホテプが設計したこのピラミッドは,砂漠の中にある6段のピラミッドだ.吉村作治によれば,これは擬似来世空間であり,まず入口の薄暗い回廊で,死後の神々と出会い,それを抜けると一転して広場に出,太陽に向かって立つピラミッドを目にする.ドラマチックな演出だ.このピラミッドも,中に入れなかった.このピラミッドは割と大きく,砂漠の中にぽつんと立つきれいなピラミッドだ.砂の上に座ると,少しひんやりと冷たく,気持ちが良い.


サッカーラの階段ピラミッド

Pyramid, Saqqara, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

このピラミッド・コンプレックスの脇には,メレルカ Mereruka の墓があり,中にはジェゼル王の像がある.チップ目当ての男が何人かうろうろしていて,勝手にガイドをしようとししてくる.


Memphis

上下エジプトの境界

メンフィスとその墓地遺跡-ギーザからダハシュールまでのピラミッド地帯,79/10/26,文化遺産

メンフィスはラムセス2世の巨像があるのと,スフィンクスがあるのと以外には,対して見るものがない.入場料 LE 14 (250円)

ラムセス 2世の巨像は,足がないので横たわっているが,立っていたら相当大きい.あのエジプト考古学博物館にあったあのミイラの主がこれを作らせたのか,と考えると,ファラオの力のすごさが少し実感できる.

しかし,本当に見るものがないので,10分で観光終わり.

 


Dahshur

屈折ピラミッド

メンフィスとその墓地遺跡-ギーザからダハシュールまでのピラミッド地帯,79/10/26,文化遺産

ダフシュールまで来ると,観光客もかなり少なくなる.メンフィスは町の中で,土産物屋もあり,水も買えるし,トイレもあるが,サッカラ,ダフシュール,次に行くメイドゥームは,単に砂漠の中にピラミッドがあるだけで,トイレも見当たらないし,水も買えない.このあたりで11:00を過ぎ,だいぶ日も高くなってきた.この日差しはかなり強烈で,じりじりと肌が焼かれていくのがわかる.太陽も真上に近く,ピラミッドはどの方向からみても日が当たっている.サングラスがないと目も開けていられない日差しだ.入場料 LE 10 (180円)

赤のピラミッド

Fig.3 ダフシュール・赤のピラミッドの内部構造

 


ダフシュールの赤のピラミッド

Red Pyramid, Dahshur, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

まず,赤のピラミッドへ.ツーリストガイドがタクシーに乗り込んでくる.いたるところに警察の検問があり,警察が銃を持って立っている.みんな暇そうで,タクシーのドライバーは,LE1,2ずつパクシーシを渡していた.ドライバーは,「警察が多すぎる」とぼやいていた.


ダフシュールの赤のピラミッドに下りていく階段

Inside of Red Pyramid, Dahshur, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

赤のピラミッドも下に降りていくタイプだ.このピラミッドは,そもそも入口が割りと高い位置にあり,そこまで上がり,入口からまた下に降りていくのだが,その道がやたらと狭く,だんだんと低くなっていく感じなので,とてもつらい.中は回廊らしきものがあるが,あまりたいしたことはない.帰りは同じ道を登る.

赤のピラミッドとは言うものの,そんなに思ったほどは赤くない.赤のピラミッドの先には,屈折ピラミッドがある.すでに見えているものの,歩くと砂漠の中を 2,3km 歩くことになる.見ると,歩いて向かっている人がいた.直射日光がきつく,歩いていくのはあまり現実的でない.

屈折ピラミッド


ダフシュールの屈折ピラミッド

Bending Pyramid, Dahshur, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

屈折ピラミッドと,赤のピラミッドは,共にスネフェル王のためのものと言われている.しかし,同じ王のためなら,形が余りにも違うのはなぜか?考えてもわからない.屈折ピラミッドは,その名の通り途中で傾斜角がゆるくなる.なぜかはわからない.このピラミッドの中には入れなかった.周りを歩いて回れるだけだ.おくにはひとつ小さいピラミッドがあり,上に上っていく道があるのが見える.一緒についてきた警察官に「登っていい?」と聞くと,「いいよ」といわれたので,登っていると,遠くにいた違う警察官に怒られた.どっちなのだ.


ダフシュールの屈折ピラミッド,化粧石の石組み

Bending Pyramid, Dahshur, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

この屈折ピラミッドは,下のほうまで化粧石が残っており,ピラミッドの土台と,その上にかぶせた化粧石との組み方がわかって面白い.


Meidum

崩れた真正ピラミッド

メイドゥームまで来ると,観光客は誰もいない.タクシーは,パトカーに先導されてピラミッドに向かう.客はうちだけで,他に誰もいない代わりに,警官ばかり何人もいる.中を見るにも,警官が一人ついてくる.せっかくピラミッド独占状態なのだが,今ひとつだ.入場料 LE 16 (290円).

メイドゥームの真正ピラミッド


メイドゥームの崩れ真正ピラミッド

Pyramid, Meidum, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

このメイドゥームの真正ピラミッドも,スネフェル王のためのものと言われる.今では崩れてしまって階段状になり,元の形は良くわからないと思うのだが,昔は真正(四角錘の)ピラミッドだったという.ここも中に入れる.

Fig. 4 崩れ真正ピラミッドの内部構造

 


メイドゥームの崩れ真正ピラミッド玄室

Inside of Pyramid, Meidum, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

この中の道は,本来の通路がないのか,途中からいかにも後から掘ったような通路だ.割と高さがあるので,少し腰をかがめば中に入って行ける.ここも下に下っていく.思えば上に上がる通路があるのは,クフ王のピラミッドだけだ.一番下まで降りると,木のはしごがあり,垂直に上に上がる.これが割りとつらい.あがると玄室に出る.大きいが,今ひとつだ.やはりクフ王のものは,時代が後であるためか,洗練されており,美しく神秘的だ.

このピラミッドは,まだ見つかっていない部屋が予感される.もっと他に部屋がありそうだ.管理人が中までついてきて,パクシーシを要求する.とりあえず LE 2 (36円) ほど渡す.サッカラ > ダフシュール > メイドゥームの順に客が少なく,ギザと違って人がいないし,ラクダ引きもいないので,落ち着いて見られる.

マスタバ墳 No.17

Fig.5 メイドゥーム・マスタバ墳 No.17 の内部構造

 


No.17 マスタバ墳 玄室

Inside of Mastaba No.17, Meidum, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

メイドゥームには,もうひとつの見所,マスタバ墳 No. 17 がある.こちらもすごい.まず,下に向かって降りる.足場がないので,ずるずると足を引きずりながらおりる.かつてない天井の低さ.かがむというより,しゃがんでヨチヨチ歩きで降りていく.すると,足場の悪いところにはしごがあり,そこを何とか降りると,這うようにしないと通れない穴があり,そこを抜けると玄室だ.石棺がひとつあり,中身はない.玄室は広くて良いのだが,また這って出るのが大変だった.

以外にこのメイドゥームのピラミッドが形が面白くて気に入った.砂漠の真ん中にポツンとある立地も良い.ここはどうやって石をこの何もないところまで運んだか謎だ.MFP (Most Favourite Pyramid)に認定.

最後に,アブ・シール Abu Siir によって帰る.

今回のタクシーのドライバーは,Shukuku といい,独学で英語を話すようになったという.アラブ人にはごく例外的な無口な人で,ほとんど話さない.運転はおとなしく,ゆっくり走る.

ホテルに帰ると,また少しプールで泳ぎ,ビールを飲む.夜は,ホテルのインディアンレストラン (Moghul Room) で食べた.ホテルがインド系ホテルチェーンだけあって,ここは,中東一おいしいといわれるインド料理屋らしい.Vindaloo という,いわゆるもっとも辛いタイプのカレーを頼んだら,冗談のように辛かった.しかし,むせる辛さではない.


皆既月食で赤くなった月

Red Moon, Giza, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

部屋に帰って,またテラスでピラミッドを眺めていたら,満月のはずなのに,月が欠けている.今日は皆既月食だった.

帰りのフライトは,時間通り.カイロの空港は,たいして店もなく,暇なので,コーヒーを飲もうとしたら,US$ はだめだといわれたので,仕方なしに US$2だけ両替して飲む.空港の中には蚊がたくさんいて,短パンでいたら,5箇所以上次々に刺され,たまらず立ち上がる.2Fが新しくなっていて,とてもきれいだった.

2004/5/5 Egypt Air MS777 Cairo 10:30 - London Heathrow 13:35 5h5m

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