Luxor

テーベと呼ばれたかつての首都

古代都市テーベとその墓地遺跡, 79/10/26, 文化遺産

2004/1/5 Monarch Air MON2438 London Gatwick 09:30 - Luxor 16:30 5hrs

カイロ編と,ルクソール・アスワン編は,別の旅行だ.今回は,ルクソールからアスワンまで,クルーズ船に乗ってナイル川をさかのぼっていく.ロンドン-ルクソール間は,モナーク・エアー Monarch Air のチャーター便でのフライト.しかし,このモナーク・エアーは,手荷物をはかりに乗せろといい,5kg 以上はだめだという.少し減らしたぐらいではだめだという.私としたことが,かなり頭にきて文句をいう.飛行機は可能な限り座席を用意した飛行機だ.機内食は出てくるが,飲み物は有料.こんなにたくさんの人がルクソールに向かうのか,と感心するほど満員だ.4時間ほど飛んだところで,アフリカ大陸の上になった.下を見ると,砂漠がずっと地平線まで続いている.ここは国土の大半がサハラ砂漠なのだ.しかも,さらさらの砂の砂漠だ.ナイル川に沿って緑地の帯ができていて,その緑の帯の端からいきなり砂漠になる.その境界線はかなり明確にわかる.ルクソールが近づくと,ナイル川がくねくねと曲がっている.

ルクソールの空港は,砂漠の中にポツンとある.飛行機から見ていると,ずーっと砂漠しか見えず,砂漠に突っ込む,と思ったとたんに滑走路が出現,着陸した.空港で US$15 を支払ってビザの印紙を買う.ビザにあたって,特に何もチェックされない.

今回はすべての宿泊は船の中だ.空港から直接船に直行し,乗り込む.船はボロいが,一応ホットシャワーは出るし,テレビも映る.屋上にプールもある.20:00からビュッフェ形式で夕食を食べる.まぁ普通.

ベリーダンスをやるというので,バーに行く.するとまずなぜか手品師が出てきて,古典的な手品をやる.わっかをつなげたり,玉を出したり引っ込めたり.しかし,なんで手品?そして次にいきなりベリーダンス.少し小太りのおばさんが腰を振る.やはり年季の入った腰つきこそベリーダンスなのだろう.4,5 曲踊ると,次は蛇使い.

手品 -> ベリーダンス -> 蛇使い

というこの流れが全く理解できないまま,初日の夜は更けていく.

朝6:30に起きる.寒い.5度ぐらいか.そのまま朝食を食べに行く.クルーズ船の料理は,基本的にバイキング形式だ.

船を出るときにカードをもらい,帰ったときに返す.このカードが元の数になるまで待って出航できるしくみだ.

カルナック寺院 Temple of Karnak


カルナック神殿

Karnak Temple, Luxor, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

7:30にはカルナック寺院に向かう.エジプトは昼間は暑いので,観光は午前中と,夕方が中心だ.カルナック寺院はエジプト最大級の寺院で,増築に増築を重ね,いくつかの年代がひとつになっている.カルナック寺院の入口にはまず小スフィンクスが並ぶ道がある.スフィンクスは,別にギザにあるあの大きい物だけでなく,割と一般的にたくさんある.この生き物が何なのか良くわからないが,猫系の体を持つ人面獣だ.結構丸くてかわいい顔をしている.

スフィンクス参道の先には塔門がある.この塔門は,エジプトの神殿に共通して見られるもので,高い箱型の建物が中央で割れていて,箱の壁には,レリーフが描かれる.この塔門はかなり巨大で,圧倒される.かつてナポレオンがここに来たときに残した文字も残っている.入口を入ると神殿のどの部分をどの王が作ったかが書かれている.長い時間をかけて,王たちが少しずつ作っていったのだ.

いたるところにヒエログリフ(エジプトの古代文字)が書かれている.博物館で見たことはあっても,実際にその場所にあるのを見たのは初めてだ.ヒエログリフは象形文字なので,造形が美しく,神殿に良くなじむ.右から左,左から右,上から下に書ける自由度もあるので,神殿のつくりにあわせて書ける.ヒエログリフは書き始めの方向に向けて書くのが決まりなので,

書き始めの方向は,文字を見ればすぐにわかる.縦書きの場合も,右へ右へと改行させるときは左を向かせ,左に改行するときは右を向かせる.ヒエログリフは表意文字と表音文字が混じっているので,単純には読めないが,人の名前など決まったパターンを覚えておくと結構楽しい.もっと勉強したかったら,

を参照.


カルナック神殿

Karnak Temple, Luxor, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

ここで圧巻なのは大列柱室.この柱は今まで見たどの柱より太く,ヒエログリフが描かれ,しかもこれが 134本も立っているのだというからすごい.ヒエログリフも装飾の一部になっており,呪文のような神秘性を感じる.圧倒されたまま奥に進むと,トトメス1世のオベリスク,ハトシェプスト女王のオベリスクがある.ハトシェプスト女王のオベリスクはオベリスクとしては最大のもので,少し白っぽく天を刺すように立っている.神殿跡を抜けてずんずん奥に行き,後ろを振り返るとはじめの塔門まで一直線に通路が並んでいるのがわかる.きちんと測量しないとこれはできないことで,当時としては細心の注意を払って建造したに違いない.

カルナック神殿はすごい.今まで他に見てきた遺跡と様式も異なるし,古さも3000年を超え,規模もすごい.格が違う感じだ.中には掃除人や,番人とか,修復している人がいるのだが,彼らは何かと旅行者を手招きしては,ちょっとしたガイドをしてパクシーシ(チップ)をせびる.


 

Karnak Temple, Luxor, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

神殿の入口まで戻ると,5歳ぐらいの少女が靴磨きをしていて,幼い声で「ハロー」「ハロー」と客引きしている.その横を高そうなカメラを持った外国人が素通りする.

メムノンの巨像 Colossi of Memnon


メムノンの巨像

Colossi of Memnon , Luxor, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

今日も早起き.神殿は基本的に夜明けと共に開くので,自然と遺跡めぐりは早起きになる.早く行けば遺跡もすいている.

朝食を手早く食べ,ボートに乗って西岸に渡る.西岸地区は,日の沈む方向,死者のためのエリアだ.この西岸にわたるボートは,激しく客引き合戦が行われている.このしつこさ,エジプト人に他の国の言葉を教え込んで,

世界最強の客引き集団

として世界各国に出稼ぎに送り込むのはなかなか良いのではないだろうか.

西岸に渡ると,まずメムノンの巨像が目に入る.これはアメンホテプ3世のもので,亀裂が入っていて像がなくと言われる(現在は補修されて泣かない).この背後には,クルナ村があり,さらに西岸の王家の谷を形作る岩山が見え,眺めの良いところだ.遠くに熱気球も飛んでいる.

王家の谷 Valley of the Kings


 

Valley of the Kings, Luxor, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

奥へと進むと,王家の谷.今でこそ道があって車で行くことができるが,かつては場所がわからないようにここで働く労働者は目隠しされて連れて行かれたとか.工事が終わると殺されたとも言われる.

この王家の谷こそルクソール観光のハイライトとも言える.四方を岩山に囲まれた中に,王の墓の入口があちこちで開いている.少しはなれたところにバスを止め,乗り物を変えて王家の谷へ.あちこちに掘り返した跡があり,その中に発見された応募の入口が転々としている.歴代の王たちが自分のために掘らせ,中にレリーフとヒエログリフを一面に掘り込ませ,大量の副葬品と共に眠っていたのだ.中でも特別なのは,ハワード・カーターが発見したツタンカーメンだが,そのツタンカーメンが有名なのは,その王の行ったことではなく,ここで発見された副葬品によってだ.この副葬品はカイロのエジプト考古学博物館にある.

まず入ったのは,ラムセス3世,残念ながら,壁画はガラス張りになってしまっていて,とても見にくい.今後も他の墓に対してこのガラス張り工事を進めるようだが,ぜひやめていただきたい.ここでは,レリーフはもとより,ヒエログリフにも色が良く残っており,レリーフも題材が豊かで面白い.足と翼のある蛇や,墓を守るアヌビス神など.この墓は,掘り進むうち,隣の墓を掘り当ててしまったので,途中で方向を変えている.一番奥は公開されていない.


ラムセス 4世/5世墳墓

Rameses IV, V, Valley of the Kings, Luxor, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

2つめは,ラムセス 4世/5世で,こちらはラムセス3世よりももっと細かく絵が書き込んであり,人面蛇や,人面鳥などもあって面白い.入った中では一番良かった.玄室には,ヌト神が背中合わせに2人描かれており,その下にはさらにたくさんの人が描かれている.この天空の図はすばらしい.王が入っていたと思われる棺も残っている.

3つ目は,セティ2世,ここには名もないミイラが横たわっている.誰のものかはわからない.王のミイラはカイロにあるという.奥の棺には裏面にヌト神が掘り込まれていた.もっとじっくりこの王家の谷を見て回る価値はあると思う.とても気に入った.

王家の谷を後にして,Stone Factory に行った.アヌビス神の置物を買って,うちの守護神にすることにした(でもその守護神はいまティッシュケースになっているが...).交渉ははじめ LE 2500 (45,000円) で始まり,最終的には LE 750 (13,500円) だった.高いか?

ハトシェプスト葬祭殿 Temple of Hatshepsut


ハトシェプスト葬祭殿

Temple of Hatshepsut, Luxor, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

次にハトシェプスト葬祭殿へ.ここは葬祭殿としてはとても広大で,2段目の右手奥にはレリーフが残っている.しかし,ここでは細かいディテールよりも,まず葬祭殿を見上げたときの青い空と,岩山の下に作られた葬祭殿とのコントラストがすばらしい.さらに,一番上の段まで上がって振り返ると今度は西岸の風景が遠くまで見渡せる.この眺めがすばらしい.この建物はかなりがんばって修復してあり,オリジナルがあまり残っていないところが惜しいところか.

ルクソール神殿 Luxor Temple


ルクソール神殿

Luxor Temple, Luxor, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

今日は天気が良いので,船のサンデッキにあがって日光浴をする.朝はセーター,ジャケットを着ていたというのに,昼間の日差しでは水着になれる.ビールを飲んでうとうとする.


ラムセス2世の巨像

Luxor Temple, Luxor, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

夕方になってから,ルクソール神殿に行く.17:00に船から歩いていくと,ちょうど夕日になり,だんだんと暗くなっていく.ルクソール神殿は,街の中心にあって,ナイル川からも見えるし,夜になるとライトアップされて美しい.もともとこの神殿は,カルナック寺院に付属していたもので,かつては,カルナック寺院までスフィンクス参道が続いていたという,しかし今では,そのごく一部しかないが,今でも 68体のスフィンクスが並んでいる.一番端まで歩いて振り返ると,参道の先にルクソール神殿の塔門が見える.オレンジ色の光でライトアップされとても美しい.この神殿の中には,モスクが作られたり,教会が作られたり,それら後から作られた物自体,400年以上の歴史があり,いまや取り除けない.特にモスクは柱廊に覆いかぶさるように立てられており,その下には壁で囲まれた空間があって,その中が気になるところだ.柱廊はなかなか見事で,ライトアップされてきれいだ.


マクドナルド

McDonald, Luxor, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

さて,この神殿の裏手には,マクドナルドがある.エジプトの食事に少し食傷気味で,かつその食事で慢性的におなかを壊していたので,嬉々として突撃.ビックマックセットと,アラブ・バーガーセットを頼む(LE 35=630円).アラブ・バーガーは,鶏肉のハンバーグを,エジプトの薄いパン(アエーシ)ではさんであるもので,悪くない.フライドポテトも普通だった.一緒にクルーズしていたイギリス人も,涙を流しながら食べていた.

船が接岸していた近くの店で,サンダルを LE 35(630円),シャツを LE 35 (630円)で購入.

ルクソール博物館 Luxor Museum


ルクソール博物館

Luxor Museum, Luxor, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

ナイル川沿いに歩いていくと,ルクソール博物館がある.入場料 LE 30 (540円).入口でいつものX線検査をし,荷物から電池を取り出して,何か言っているので,「だめなの?」と聞くと,どうやら「俺にくれ」といっているのだ.黙って取り返す.

ここは大きさはたいしたことはないのだが,展示の仕方のセンスが良く,見ごたえがある.見ていて飽きない.かなりレベルの高い彫刻が並んでいる.アメンホテプ3世像が目玉だが,トトメス3世像も滑らかで,見ていて飽きない.ツタンカーメン王墓からの出土品も多少ある.この美術館はとても気に入った.

帰り道に,ミイラ博物館 Mummification Museum もあるので,ついでに言ってみる.入場料 LE 20 (360円).こちらはなんだこれ金返せ的へなちょこ博物館で,ミイラの作り方を説明するかと思えば柱と繁華で,ミイラもたいしたことがない.

ルクソール寺院を回ってローカルの街中を少し巡ってみる.ここに来ると,客引きが声をかけてくることもなくなり,彼らの生活が少し見えて面白い.マクドナルドの前には,馬車のタクシーの客引きがたくさんいた.この時代にまだ馬車が使われているところはまだまだあるが,だんだん少なくなってきている.でもこの街は,ずっとこのままであって欲しい気がする.

 


Edfu

ホルス神殿

エスナの水上マーケット


ナイル川沿いの景色

Esna, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

船で屋上のデッキの席取りをする.着替えてサンベッドで横になっていると,船が動き出した.エスナ Esna に向けて出発だ.ナイル川は,川幅 100m-200m ぐらいしかない.このため,なるべく水深のある真ん中を行く. 川岸には,エジプト人の生活がある.エジプト人とは,「ナイルの水を飲むもの」というのがもともとの定義だが,エジプト人は,ナイルに沿って,その水を飲みながら生活している.ナイルを離れると,そこには砂漠があるのみ.人は生きていけない.川で洗濯する人たち.日干し煉瓦の家が並んでいる.たまにナツメヤシの木が並び,また家々があり,この繰り返しだ.

日差しが強く,船もそれほど速くないので,風はあまりない.ナイル川をゆっくり進みながらサンベッドに横になり,ビールを飲み,本を読んですごす.


エスナの水上マーケット

Esna, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

エスナに着くと,手漕ぎの2人乗りボートが船に近づいてくる.川幅は狭いといっても,手漕ぎボートには広い.船は真ん中にいるので,こぎ手は必死だ.みんなは船の屋上にいる.大体 5階建てぐらいの高さだ.その客に向かって,エジプトの服,ガラベーヤを広げてみせる.客が興味を示すと,ビニール袋に入れて,船のデッキに投げ込む.屋上のデッキと手漕ぎボートで叫びながら値段交渉し,交渉成立したら客はお金を入れて投げ返す.気に入らなかったら服を投げ返す.手漕ぎボートは5そうやってきて,あたりは叫び声でいっぱいになった.男物のガラベーヤ上下を LE 60 (1080円)で購入.

エドフのホルス神殿 Temple of Horus


エドフのホルス神殿

Temple of Horus, Edfu, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

夜中の間も船は移動し続ける.朝食を食べ終わっても,まだ移動していた.たくさんのクルーズ船がこのナイル川を行ったり来たりする上に,川幅はあまり広くないので時間がかかる.混んでいるところや,接岸するとき,船同士ホーンを鳴らしあって時間をかけながら行う.

ホルス神殿への道は,人と馬車と自動車とが交じり合い,互いに相手をどかしながら自分の進みたい方向に進む.一応は右側通行で中央分離帯もあるのだが,あいていればかまわず反対車線も走る.ホルス神殿は,ぐるっと壁に囲まれ,その外側にハヤブサのホルス神が繰り返し描かれる.正面は奥なので,外壁に沿って奥へ.巨大な塔門があり,巨大なレリーフが描かれている.この門の奥へ行くと,二重の冠をかぶったハヤブサの彫像がある.この像はひとつの石からできており,冠だけが取り外せるようになってる.この像がホルス神だ.冠は,王が,上エジプトの王か,下エジプトの王か,または上下エジプトの王かによって使い分ける.二重の冠は上下エジプトの王だ.


レリーフ

Edfu, Egypt, Yuichiro Nakamura, 2004

列柱室は天井近くに彩色された跡が残っている.内部はすべての壁,柱にレリーフとヒエログリフが彫りこまれている.天井jに少しだけ穴が開いており,その光がわずかに内部を照らす.今では照明がつけられているが,昔は暗かっただろう.奥には部屋がいくつかあり,左奥の部屋には地下通路に通じる入口がある.この寺院はもともと地中に埋まっていて,一部だけが地上に出ていたという.これだけの大きな遺跡が埋まっていたとは信じがたい.遺跡の上に住んでいた人たちは,川べりのマンションに移住させられたという.

この神殿の脇には観光客向けの店が並んでいる.たいしたものは売っていないが,ガラベーヤだけはやたらにたくさん売られている.このガラベーヤ,各クルーズ船は毎晩違うパーティなどやるのだが,その中にガラベーヤパーティがあり,客はみんなガラベーヤを買わないといけない.値段的にはたいしたことはないのだが,必ず売れるので,店もたくさん並べて必死で売るのだ.昨日の水上マーケットで買ってしまったので,今日は見るだけ.

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